コラム・お知らせ

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2024.08.11

【公益法人】理事の「競業」と「利益相反取引」の制限について

競業取引に関する制限

理事会における事前承認

(⼀般法⼈法第84条第1項第1号、第92条第1項、第197条)

法⼈の理事は、競業取引を行おうとする場合、取引開始までに、理事会において当該取引につき重要な事実を開⽰し、その承認を受けなければなりません。

ここで対象となっている競業取引とは、「理事が⾃⼰⼜は第三者のために法⼈の事業の部類に属する取引をしようとするとき」とされております。

さらに、「事業の部類に属する取引」と は、市場において法⼈の事業の⽬的として⾏う取引と競合することにより、法⼈と理事との間の利害の衝突が⽣ずる取引のことをいう、とされます。

競業取引に該当するか否かは、法⼈が実際に事業の⽬的として⾏っているか否かが判断基準になるとされており、たとえ定款に記載がない事業であっても、現に継続的に⾏っている事業や近い将来に⾏う予定である事業については該当する余地があると解されています。

理事会に対する報告義務

(⼀般法⼈法第92条第2項、第197 条)

承認を受けて⾏った場合であっても、当該取引を⾏った理事は取引後遅滞なく、取引についての重要な事実を理事会に報告しなければなりません。

利益相反取引に関する制限

(⼀般法⼈法第84条第1項第2号第3号、第2項、第92条第1項、第197条)

理事会における事前承認

法⼈の理事は、利益相反取引を行おうとする場合、取引開始までに、理事会において当該取引につき重要な事実を開⽰し、その承認を受けなければなりません。

制限の対象となる利益相反取引とは、以下の通り規定されています。

  • 理事が⾃⼰⼜は第三者のために法⼈と取引をしようとするとき(いわゆる直接取引)
  • 法⼈が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において法⼈と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき(いわゆる間接取引)

直接取引とは、例えば以下の取引が該当します。

  • 理事が当該法⼈と売買契約を締結する場合
  • 理事が当該法⼈主催の講演会において講演を行ったり執筆依頼を受けて執筆活動を⾏うなどした場合に、理事の報酬とは別に報酬を受け取るような場合

対象となるのは「理事」ですので、法⼈⾃⾝の代表理事に限りません。

また、間接取引とは、例えば以下の取引が該当します。

  • 当該法人が理事の債務保証を行う場合
  • 法⼈が理事の債務を引き受ける場合
  • 理事の債務について法⼈が担保を提供する場合

どのような取引が規制の対象となるかについては判断が難しいケースもありますが、 承認を受けるべき取引であるにもかかわらず承認を経ずに⾏った場合は、取引⾃体が無効となる可能性もあります。

損害が発生した場合の任務懈怠責任

(⼀般法⼈法第111条第3項、⼀般法⼈法第95条第5項、第197条、第198条)

規制の対象となる利益相反取引によって損害が発⽣した場合、承認を受けて⾏ったか否かにかかわらず、利益相反取引を⾏った理事や当該取引を⾏うことを決定した理事は、任務を怠ったものと推定されます。

承認を受けて⾏った場合、理事会の承認決議に賛成した理事(理事会の議事録において異議を留めなかった理事は当該決議に賛成したものと推定)も任務を怠ったものとして推定されます。

まとめ

競業取引や利益相反取引に該当する可能性のある取引を⾏う際は、慎重に検討し適切な⼿続を経ることが重要となります。